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Japanese Paper: コレクション
父と空と作品_edited.jpg

Japanese Paper

 タケナカはもともと低血圧で朝起きが苦手だった。グズグズと布団から出られない彼はそのことをよく父に叱られていた。その彼が早起きを身につけたきっかけは紙作りである。

 北海道の実家を離れ、様々な土地で暮らしながら、30代から40代をタケナカは九州で過ごした。遡れば彼の父は大分の由緒ある家の出である。意識せずとも彼の血の記憶が九州という場所を選んだのかもしれない。歴史文化が底なし沼のように深く深く裏付けられている土地で、その昔中国から伝来した紙という素材に彼は出会い、そして惹かれた。

 

 九州の夏は暑い。陽が昇ってからの数時間、気温の上がる前に作業を終わらせなければ、紙は思うように作れない。

 タケナカは描くように紙を作る。

 川の流れのような、雲が空に描く風紋のような、もしくは顕微鏡で観るアメーバの動き回るさまであるような、そんな紙が彼の作品である。

 

 造形作家であった父に、タケナカ自身が作家として認められたのは、彼が紙を手掛けるようになってから。

 

 「これは面白いな」とタケナカの父が言ったその紙の作品は、今でも北海道の彼の家に飾られている。

Japanese Paper: プロジェクト
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